監修:名古屋大学大学院 医学系研究科
精神医学・親と子どもの心療学分野 教授
尾崎 紀夫 先生
うつ病で元気のない患者さんに「がんばって」と声をかけたい気持ちは、ご家族なら当然です。しかしうつ病のもっとも重くつらい時期(急性期)では、休息によってこころとからだをしっかりと休めることが大切となるため、はげましや気晴らしは控える必要があります。
その理由は、うつ病のもっとも重くつらい時期(急性期)では、不安や落ち着かない感じ(焦燥感)があり、「どれから先にやればよいのか?」という優先順位がつけられない状態になっています。そのため、ご家族に「がんばって」とはげまされても、何をがんばればよいのか、自分はどうがんばればよいのかがわからないのです。さらに、ものの見方が否定的になっているため、「家族の応援に応えられない自分はダメだ」と自分を責め、さらに状態が悪化してしまうこともあります。
また、うつ病のもっとも重くつらい時期(急性期)には、物事に対する興味や楽しいと思う気持ちがなくなっているため、気晴らしをすることへの興味や関心がもてないうえに、気晴らしをしても楽しいと思えない状態になっています。しかし、ご家族や友人から、気晴らしに「旅行に行こう」、「買い物に行こう」と誘われると、断っては悪いと考えたり、「せっかく誘ってくれているのだから楽しまなくてはいけない」と義務的に考えたりして、せっかくの気晴らしが疲れるばかりという結果になります。また、この時期のうつ病患者さんには旅行ができるだけのエネルギーがないことも知っておきましょう。
上記の症状の他にも気になる症状があらわれた場合は、医師または薬剤師にご相談ください。