監修:医療法人社団 新光会 不知火クリニック 副院長
産業医科大学 名誉教授
中村 純 先生
まずあなたの大切な人の、今の悩みを聞いてあげることからはじめてみてください。うつ病の患者さんは、こころとからだの状態が不安定で、些細なことでも不機嫌になったり、感情的な言葉を発することもあります。このようなときにまともに受け止めて口論になったり、「仕事をなまけたりしているだけなのではないか」と誤解して責めないでください。できるだけご本人の苦しみを受け入れ、「どうすれば治るか一緒に考えていこう」と支えてあげてください。
相手から話してもらう
大切な人がうつ病かもしれないという焦りから、その原因を追究しようと、どうしても問いただしがちになりますが、自分から話をしやすい雰囲気をつくってあげることも大事なことです。テレビを消して、食後や就寝前のひととき、お茶を飲みながら、今日あったことや子どものことなどをゆったりと話す時間をつくってください。 またうつ病のときには、悪いほうにばかり考える傾向があるので、退職や離婚を切り出されることもあるかもしれませんが、「今は物事を決断できる状態ではないから、病院に行って先生と話をしてから決めよう」と決断を急がせないようにサポートしてあげてください。
悩みに素直に耳を傾ける
ご本人は、ストレスや病気への不安、気力のない自分への焦りなど、いろいろな悩みを抱え込んでいます。まずは、患者さんがひとりで抱えていた苦しみを話せるようにしてあげましょう。悩みを人に話すだけで、ずいぶんこころが軽くなるものです。またご本人のペースにのったり感情移入することはやめて、客観的に話を聞く姿勢も大切です。
ストレスになる「決めつけ」
ご本人の話を聞くのが目的ですから、あなたの意見や考えをさしはさまないことも大切です。うつ病の患者さんの話は、どうしても理論的ではありません。うつ病のせいで思考力も低下していますから、感情的になったり、つじつまがあわないこともあります。たとえご本人が迷っていても、あなたが「○○すべき」とか「それは○○だ!」と決めつけると、まじめな性格の人だけに、かえって大きなストレスになってしまうこともあります。
NO!BUTではなくYES, BUT
患者さんの話にもし、つじつまがあわないとか、あなたの意見と違っていたりしている部分があっても、「それは違う!」と拒否しないでください。うつ病のときは孤立感や孤独感を抱きやすい状態になっているため、反対の意見を少し聞いただけで、「否定された!」、「誰も自分のことをわかってくれない」と、自分のからにとじこもってしまうこともあります。いったんは患者さんの話をそのまま受け止めて、じっくりと時間をかけて話をするほうが効果的です。