監修:医療法人社団 新光会 不知火クリニック 副院長
産業医科大学 名誉教授
中村 純 先生
うつ病は本人が自覚して医師に相談しようと決断するころには、かなり悪くなっていることが多いものです。そして、うつ病のこころの症状はいろいろな形であらわれてきて、最終的には生きていくのもつらいという状態になることもあります。単なる疲れからくる症状なのか、うつ病からくる症状なのかは医師でないと判断することはできません。治った患者さんの中には「もっと早く医師に相談すればよかった」、「医師に苦しみをすべて話せてほっとした」という方もいます。ご本人がひとりで抱えている苦しみから、少しでも早く開放してあげるために、早めに医師に相談してください。 そのまま放っておくと、原因のわからない不調に患者さんの不安はますます大きくなり、「自分はダメな人間だ」と、どんどん悪い方へ考えてしまいます。
今の状態がうつ病という病気によるものであること、治療が必要な状態であることがわかれば、治療を受けてみようと前向きになれるかもしれません。
原因にとらわれすぎないことが大切です。
患者さんがうつ病と病院で診断を受けたあと、ご家族が「なぜ、うつ病になってしまったのか?」と、原因探しをすることがあります。教育が間違っていた、話を聞いてあげなかった、自分が悪かった、会社や学校に責任がある…原因をあげればきりがありません。しかし、うつ病はたった1つの原因だけで発病するものではありません。また、原因と考えられる要因を排除したからといって、うつ病が治るとは限りません。大切なことは、あなたの大切な人がうつ病になったという現実を受け止め、これからどうしていくことがご本人にとって一番よいことなのかを、ご本人や医師と一緒に考えていくことです。