監修:名古屋大学大学院 医学系研究科
精神医学・親と子どもの心療学分野 教授
尾崎 紀夫 先生
うつ病の症状がもっとも重くつらい時期は、こころやからだの症状も重く、自分を責める気持ちが強いため、患者さんは何かにつけて物事を悪くとってしまいがちです(否定的なものの見方)。
しかし、こういった否定的なものの見方は、うつ病で脳の機能に変化が起こっているためであって、患者さんの本来の考え方ではないことを理解しておくことが大切です。
図に記したように、ストレスになるような出来事が重なり、周りのサポートが十分得られず、睡眠も不十分になりがちな状況が続くと、ストレスとなる出来事を脳が処理しきれずにパンクしてしまい、脳の機能に変化が起こります。その結果、脳が判断している「ものの見方」が極端に悪いほうに向かい、自分の今の状況をより悪く感じたり(負荷の過大評価)、周囲のサポートが頼りにならないと考えたり(サポートの過小評価)、不安が生じて眠れなくなるといった、悪循環が起こります。
そして、このような悪循環が起こるのがうつ病であるということを、ご家族も知っておくことが、これからのうつ病治療をサポートするうえでとても大切になります。
患者さんはものの見方が極端に悪いほうに向かっているため、「こんなふうになったのは、自分の弱さのせいだ」、「(職場や家庭などの)環境に問題があるかぎり、治療を受けてもよくならない」、「自分だけがこんな目にあっていて、誰もわかってくれないし、解決の方法があるとは思えない」という考えが強く、治療に積極的ではありません。
大切なことは、患者さんが抱えている問題に共感しつつも、患者さんの考え方に巻き込まれないことです。