監修:医療法人社団 新光会 不知火クリニック 副院長
産業医科大学 名誉教授 
中村 純 先生
うつ病の症状は、こころとからだの両方にあらわれます。からだの症状は、こころの症状に比べるとわかりやすいものですが、うつ病が原因で、からだの症状が起きているとはなかなか判断されにくいものです。
こころの症状
こころの症状でよくあるものは、「抑うつ気分」と「意欲の低下」です。
| 抑うつ気分 | 
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|---|---|
| 思考力の低下 | 
  | 
| 意欲の低下 | 
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からだの症状
うつ病のからだの症状は、1つではなくいろいろな症状があらわれます。眠れないことに加えて、頭痛がする、食欲が出ないなどです。そしてこのような症状があるにもかかわらず、いろいろな検査をしても原因がわからないということがよくあります。
からだの不調に加えて、よく考えてみると「毎日が楽しくない」、「何をしてもつまらない」、「とにかく憂うつだ」など、こころの症状もある場合は、早めに医師に相談することが大切です。
| 睡眠の異常 | 
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|---|---|
| 食欲の低下 (ときに増加)  | 
  | 
| 疲労、倦怠感 | 
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| ホルモン系の異常 | 
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| その他の症状 | 
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なぜ、うつ病でからだの症状があらわれるのでしょうか?
うつ病では、さまざまなからだの症状があらわれるため、多くの方にうつ病という自覚がなく、何らかのからだの病気があるのではと考えて、内科などを受診する人が少なくありません。実際に、うつ病患者さんの半数以上がはじめて病院に行くときには、精神科ではなく内科を受診していたという報告があります1)。
1)三木 治:心身医学42(9):585,2002
では、なぜ、うつ病でからだの症状があらわれるのでしょうか?
それは、心配事があればお腹がキリキリする、緊張すると胸がドキドキするというように、こころとからだはつながっているからです。 うつ病は、精神的に落ち込む病気ですが、そのこころの不調がからだにもあらわれているのです。また、うつ病は気分の不調をきたすだけでなく、神経やホルモン、免疫などに影響を及ぼし、これらが複雑にかかわりあって、いろいろなからだの症状があらわれると考えられています。これを心身相関といいます。
さらに、うつ病になると「不安になりやすい」、「物事を悪くとりやすい」という状態になるため、普通だったら見過ごす程度のからだの不調も、とても大きく感じてしまうのです。
逆の症状があらわれることもあります。
眠れない、食欲がない、落ち込んでいるという症状はうつ病でよくある症状ですが、ときに逆の症状があらわれることがあります。
- 眠れない → 睡眠の過剰があらわれることがあります。(過眠)
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- 朝も遅くまで寝ている
 - 休みの日は1日中寝ている
 
 - 食欲がない → 食欲が異常に進むことがあります。
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- いつもよりよく食べるようになった
 - やけ食いにも似ている
 - 夜中によく食べている
 - 数か月で明らかに太った
 
 - 落ち込んでいる→不安や落ち着きのなさ(焦燥感)があらわれることがあります。
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- イライラしている
 - じっとしていられない
 - ソワソワした感じ
 
 
注意:特に高齢者のうつ病では、不安や焦燥感(イライラしたり、あせったりする)が強く出て診断が遅れることもあります。
上記の症状の他にも気になる症状があらわれた場合は、医師または薬剤師にご相談ください。






