監修:帝京大学医学部精神神経科学講座 教授
功刀 浩 先生
参考文献:功刀 浩、今泉 博文:
食事療法はじめの一歩シリーズ 国立精神・神経医療研究センターの
医師と管理栄養士が教える
うつ病の毎日ごはん 女子栄養大学出版部 2015
うつ病と食事は、関係があるの?
ストレスがうつ病に深く関わっていることは広く知られていますが、食生活とうつ病との関係をご存じの方はまだまだ少ないようです。実は最近の研究から、食生活や食事、栄養素とうつ病との間には深い関係があることがわかってきました。こうしたことは海外では認知度が高まりつつありますが日本ではまだ十分浸透しているとはいえず、うつ病に対する新しいアプローチとして注目されつつあります。
ここではうつ病と食事に関する情報を、具体的なレシピとともに紹介します。うつ病に対する取り組みの一環として、日ごろの食生活や栄養素の摂取を見直してみてはいかがでしょう。
うつ病患者さんに望ましい食事は?
うつ病患者さんに望ましい食事は「地中海式食事」や「和食」、一方で望ましくない食事は加工食品の多い「西欧式食事」といわれています。
地中海式食事は、欧米では健康食の代名詞のように使われます。野菜や果物、豆類、魚介類、穀物そしてオリーブオイルが豊富である一方、肉や乳製品(チーズやバター)はそれほど多くありません。和食も健康食として注目されており、地中海式食事と同様に、魚が多く肉や乳製品が多くないことはイメージしやすいと思います。つまり、日本人にとっては、日本の伝統的な食事をとればよく、食生活を地中海式食事に近づけることは必ずしも必要ありません。しかし、和食では塩分が多い傾向があり、また、日本人は乳製品の摂取が少なくカルシウム不足になりがちという欠点もあります。ですから、塩分少な目な伝統的和食と乳製品の摂取をこころがけるのが理想的です。バランスのよい食事で、栄養素を過不足なく摂取することが大切なのです。
一方、西欧式食事とは、加工度の高い食品(ハムやソーセージなどの加工肉、ポテトチップス、砂糖など)が多く用いられている食事をいいます。これらの食品では、加工の過程で、次のページで紹介するうつ病患者さんに望ましい栄養素が失われがちです。また、こうした食事を多くとっていると、必要な栄養素が摂取できないばかりか栄養バランスも崩れてしまい、生活習慣病や精神疾患の発症に影響するおそれもあるのです。食生活が西欧式食事にかたよっている場合は、地中海式食事や和食に切り替えたほうがいいと思います。