監修:名古屋大学大学院 医学系研究科
精神医学・親と子どもの心療学分野 教授
尾崎 紀夫 先生
うつ病のときは、脳機能が変化して、「物事の悪い面ばかりをとらえる見方」になります。そのため、元気なときなら気にならないようなちょっとした失敗でも、「とんでもないことをしてしまった」、「自分はダメな人間だ」と考えてしまいます。さらに、「こんなに役立たない自分はこの職場にいても、皆に迷惑をかけるだけだ」と考え、退職などに突き進んでしまうことがあります。
この「退職」という決断は、うつ病によってものの見方が否定的になっているために生じたものであり、患者さん本来の考え方ではありません。決断を焦らずに、うつ病から回復して本来のものの見方、考え方を取り戻してから、「仕事をどうするか?」などの、重大な決断を行うようにしましょう。
また、せっかく治療をはじめても、否定的なものの見方に基づいて退職や離婚をしてしまい、その結果、環境が悪化してしまう場合があります。このように否定的なものの見方によって引き起こされた環境が、新たなストレスや周りからのサポートが得られにくい状況を作り出し、治療に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。
うつ病の症状がもっとも重くつらい時期には、重大な決断は実行に移さないようにしてください。